散歩日:2021年10月26日(火) 川和中学校15時から 記録:nob
参加:川手先生、江幡夫妻、白川、大橋、杉原、野島、福井、木下、中山夫妻、黒沼
ゆうばえのみち、川和富士公園、川和東小学校を過ぎた先、フェンス越しに右手に見える中学校が「川和中学校」です。
川和中の校章に描かれる菊は、松林甫(中山恒三郎家)の「川和の菊」に因んでいます。港北ニュータウンの開発に伴い人口が増え、学区であった都田中が収容困難になるとともに「川和地区に中学校を」と町内あげての署名と陳情が教育委員会になされ、昭和55年に開校が実現しました。その中心となったのが当時の町内会長を務めていた中山氏、副会長の岩澤氏、川和地区の地権者の方々でした。
港北ニュータウン内で最初に建設される中学校だったので、横浜市6大事業の一つとして横浜の都市づくりのコンセプトを示す位置づけとして、企画調整室(室長・田村明氏)からの依頼で著名建築家による個性のあるデザインが採用されました。
今日の待ち合わせは緑道沿いの正門。放課後の部活時間に岩田副校長に案内していただきながら、つかの間、中学時代にタイムスリップした爽やかな秋のひと時でした。全身エネルギーで真っ直ぐな全校生徒900人近い中学生パワーをのみこんでなお、爽やかで開放的な空間を演出する立役者がこの校舎のデザイン!代官山ヒルサイドテラス、幕張メッセ、東京体育館などのいくつもの有名建築を設計された、世界的に有名な槇文彦氏の設計によるものです。大きな窓やデザイン的にも美しいあかり取りの開口部。コンクリートート打ち放しの力強さ、いろいろな形が大胆に配置されて冒険的で、自由で、大らかさを感じる校舎でした。10代の多感期の大部分の時間を過ごす子供たちへ、縮こまらずに自由に大きくあっていいんだよというメッセージとともに、ホッとできる中庭空間や至る所にある座れる廊下にも子供たちへの優しさを感じる設計でした。
一度中に入ってみたい...という思いをハレバレ会から申し入れたところ、快くOKいただき見学が実現しました。今日はその見学レポートを、写真満載でお届けします。
1.正門(緑道沿い)
左手の煉瓦造りに見えるのが体育館。真ん中にある2本の煙突のようなものはなんでしょう?
答えは、後ほどわかります。
四角、丸、三角・・・門をくぐるなり、目がキョロキョロ。
2.裏門から下足室
期待に胸を含ませながら、まずは下足室へ。
このエリアは元々は体育館と同じレンガ貼りでしたが、雨漏り対策を施してこの色になりました。
階段を反対側から。右手に下駄箱が見える。
3.地域交流室
まずは、下足室を入って右側、体育館の向かいにある地域交流室へ。
岩田副校長から川和中学校のお話を伺いました。
2年前に岩田先生はお隣の川和東小学校からこちらに赴任、赴任後に川和中の校舎が槇文彦氏設計と知ったそうです。書庫を片付けていた時に偶然出てきた『新建築』という雑誌の表紙が、なんと川和中学校!建築的に貴重なものなのだと初めて知り、『新建築』の出版元に許可を得て保護者・地域向けの広報誌に特集を組んで中学校を紹介したり、桜木町で開催された槇文彦展覧会にも行かれたそうです。展覧会では、一部でしたが川和中も紹介されていました。
何よりもこの建築の素晴らしさをできるだけ多くの方と共有したいという思いがあり、今回のハレバレの申し出に応じてくださいました。
川和中は現在築42年。老朽化・傷み・雨漏りなどの修繕が必要になり、昨年から大規模改修が入っています。
横浜市全体で校舎老朽化による建替えが多い中、川和中は建築的な価値を考慮して“修繕で残していく“という方針が出ています。
生徒たちは緊急事態宣言が明けて日常に戻りつつありますが、特に今年の中3生は修学旅行を一度も経験できないまま卒業。この校舎で暮らした日々が思い出になればと、建築の話をしたそうです。今回のハレバレの取材も含めて、外部からの川和中校舎に対する注目度を知った時に、生徒たちも一層母校への誇りを思ってくれるのではないかと期待しているとおっしゃっていました。
設計専門家もいるハレバレ隊のレポート熱が上がります。
4.体育館
地域交流室を出てまず正面に目に飛び込むのが体育館。
部活中のバレー部の生徒さんが元気にサーブ練習をしていました。
バレーボールコートが2面取れる、少々小ぶりな体育館です。
体育館内部を見ていて、屋根近く上部の窓ガラスのフォルムが美しく目を引きます。
この「カタチ」、クラスルーム棟のアーチとの連続したデザインになっています。
体育館の中を覗くのはほどほどに、見学は進みます。
体育館に沿った少し広めな廊下。さりげなく、長いベンチと一体型。
座面として貼られた木材は40年の歴史を感じさせる色に育っています。
槇氏の設計は打ち放しコンクリートが特徴なのですが、改修時にコンクリート壁がクリーム色に塗られました。
コンクリートのグレーと木板との組み合わせは、もっとカッコよかったでしょう、とはハレバレ会の心の声。
天井にはデザインが美しいあかり窓。
(上記「1.裏門」の2枚目の写真に見える三角部分の正体がこのあかり窓)
ベンチは体育館の入り口部分へと続き、真っ直ぐだったベンチがこの開口部には模様的に配置されています。
ベンチ幅や高さも様々、試合の時にはチームごとに円陣を組んで作戦会議・・そんな光景が目に浮かぶようなスペースです。
川手先生、ひと休憩。とても座り心地がいいのです。こちらは幅広タイプ。
運動中に鼻血が出てしまった子を少し寝かせたり・・いろいろな使い道になりそう。
はしゃぐハレバレ隊の仰ぐ先には・・・
どーん! と、あかり窓。
これが、1.裏門の1枚目の写真に写っている円柱の正体でした。なんとかっこいい!!
5.中庭
体育館、下足室を越えて、中庭へ向かいます。
ちょっと上を見上げると、吹き抜けや、あかり窓、
ガラスのパターンがデザイン化された大窓、
単なる階段でないデザインに凝った階段・・・ いちいちホォ〜と反応して足が止まってしまうハレバレ隊。
なかなか前に進めません。
校舎案内図。
保健室前から眺める中庭。その向こうに、川和中の特徴的な弧を描く普通教室群*。
四季を感じさせるシンボルツリーを眺めながら、3年間を過ごすのですね。
赤く紅葉する花のきれいな樹、黄色く紅葉する実のおもしろい樹を配置しているのも素敵です。
いろいろな思い出がここで生まれそう・・コンクリートのベンチもいい雰囲気でした。
(*普通教室群=クラスルーム棟。建築雑誌に記載されていた表現を使います)
違う場所アングルからですが、棟が弧を描いているのがよく分かります。
(奥に見える高い建物は、後から設置したエレベータ)
6.普通教室群
廊下がこんなふうに曲がっています!こんな学校、見たことがありません。
先生方も曲がってしまうと生徒が見えない、のだそう。
教室は四角いため、隙間を埋めるように「いびつな倉庫」があります。
教壇に立つ川手先生。今は先生と生徒の距離・圧迫感をなくすために、教壇がない学校が多いそうです。
7.多目的ホール
普通教室群を抜けて外に出て、ガラス張りが目を引く多目的ホールへ向かいます。
傾斜屋根による遠近感、全面ガラス張りの壁で開放感があります。
多目的ホール入り口付近の壁にもさりげなくロング・ベンチ。
お箸が落ちても可笑しくてしかたない15歳、ここでみんなで笑い合うのかしら。
この多目的ホールは正門左手に見える、2方向に大きく傾斜した屋根を備える棟です。
日暮れ時、道路側上部に設けられた細長い窓からは、オレンジ色の明かりのラインが。
そんな風景も、この学校が只者ではないことを感じさせる印象的なデザインです。
そしてその中は・・・
卓球台。卓球以外にも高さを必要としないスポーツ、音楽発表や、クラス全体での話し合いなどに使われているそうです。
コロナ禍前は地域にも開放して、地域の集まりが開かれたこともあったとのこと。
多目的ホールは昨年の大規模改修の対象になり、全面改修が終わっています。
入口反対側から。右窓の向こうには、カーブする普通教室群。
この窓ガラス、球技で割ったら大変。展覧会・音楽会などのアート系にぴったりの雰囲気です。
2階のギャラリーに上がると、多目的ホールの形がよく分かります。
ハ「あの黄色の線はなんですか?」
先「四角くないから、いつも通りに子どもたちを整列させると入らないんです。だから、並ぶ時の目印になるように線が引かれてます」
ハ「なるほどー。おしゃれには苦労が付きものなのねぇ」
校舎内のあちこちで見られる固定概念から外れた自由さ、窓、あかり、ベンチ、形・・・伸び伸びと成長してほしいという思いが感じられます。
8.図書室
多目的ホールの2階から渡り廊下を渡ると、反対側は図書室です。
ハレバレ会のメンバーは都筑区内で読書に関する活動をしている人が多いので、学校司書の先生に了承いただいて見学させていただきました。図書室入ってすぐの右手に、週末だけ開く「市民図書室」もあります。
本棚の圧迫感のない開放的で明るい図書室。活字に親しむ機会を増やしてもらうため、手塚治虫さんの漫画やライトノベルなども多めに置くなど工夫をされています。ハリーポッター原書も揃っていました。
9.空中回廊
図書館出口付近から、2Fに被服・調理室のある特別教室群を見ると、「しかく」の連なりが美しいです。
右側の四角いアーチ状になっている部分は空中回廊で、図書室ー多目的ルームを繋ぐ廊下と、普通教室群の2Fからひと繋がりのカーブを描いています。
上の写真の反対側(5.中庭のところで、保健室を背に中庭を眺めた風景)
この空中回廊は生徒たちからの人気が高く、ここでおしゃべりを楽しむ子たちが多いそうです。
四角ゾーンに向かう途中に三角を配す、洗練されていながら可愛らしさが。大人と子どもの間の世界。
こんな素敵なところで青春を過ごせる川和中生は幸せですね!
回廊から見える「アーチ」の普通教室群。夕焼けが映えています。
10.特別教室群(2F被服・調理室)から校長室・職員室
秋の日はツルベ落とし。日が暮れるのが早いので、校庭の方まで見学するために急ぎましょうと少し急ぎます。
放課後なので専門科目棟は真っ暗。さっと過ぎようと思ったら、思わずまた足が止まりました。
突き当たりにこんなベンチスペース。
見上げると...コンクリート打ち放しのかっこよさ!引かれたブルーの線がアクセントになって、夕陽が差し込みます。
丸ベンチを正面に左手は階段。大きなモダン絵画のような壁の模様。
コンクリートと木の手すりの感じもクリーム色に塗られた体育館前と違い、修繕前の様子を垣間見ることができる一帯。
丸ベンチを正面に右へ、校長室・職員室方面へ。
ふと振り返ると、ここにもこんな「まる」が!
なぜここは「まる」の世界?
と思ったら、この廊下部分の壁の向こうは、今日の見学で一番最初に通った裏門から体育館前を通る2つの円柱が印象的な場所なのです。丸ベンチのところの窓からは、体育館と円柱が見えます。仕掛けが深い・・・
感動でふらふらしながら見学の列についていくと、またまた足が止まる・・
なんだか大人な雰囲気の、おしゃれな“新聞スペース“。
左窓の向こうは裏門。登校してくる友達に、ちょっと賢い僕/私を見てちょうだいなんてするのかしら〜と、おばさま方はもはや夕焼けマジックもあって心は女子中学生に戻ってはしゃいでしまいました。
そしてはしゃいだ先にあるのが、校長室と職員室。
その前の廊下にも、ロング・ベンチが施されています。
11.増築した普通教室群
生徒増に伴い、増築した教室がその先に続きます。
これは普通のよく見る中学校舎、という感じ。
増築に伴い槇文彦氏の意向は入っているのかという質問に、おそらくそうです、とのこと。
スペースにも予算にも限りがあります。ずっと見てきた元からあった部分こそ、ハレバレ会で何度も書いている、高度成長経済期・日米貿易摩擦もありお金をどんどん使いなさいという時代の象徴だったのでしょう。
増築部分を通って階段を降りて1Fに戻ってきました。
校舎内の見学はもうこれでおしまい。と思った最後に、三角ベンチとその向こうには四角ベンチに丸い柱!
大満足のツアーでした。保健室・下足室を通って、来客者下足室へ。
スリッパから外履きに履き替えて、次は運動場です。
下足室を出た空間は、「やぐら」をイメージしているのだそうです。
12.運動場
グラウンド側からの体育館外観。
座るには少し段差のある階段上の観客席のようなところも、体育館の大窓やクラスルーム棟と同じアーチ状を意識しています。
この先は部室と倉庫のスペース。少し薄暗いのですが、実はここにもすごい仕掛けがありました。
倉庫の1室を見せていただきました。天井に大きなあかり窓があります。
このあかり窓こそ、緑道から見えていた「謎のドーム」の正体でした!すごい演出ですね。
(翌日撮影)
部室・倉庫と反対側には、プール。今夏の水泳全国大会リレーで優勝したそうです!おめでとうございます。
その先に、剣道・柔道などをする格技場。
中では剣道部が練習中でした。
こちらもコンクリート打ち放しに、幾何学的な模様が入って個性的です。
(緑道から)
(緑道から)
これにて学校見学はおしまい。
岩田先生、2時間にわたって余すところなくご案内くださりありがとうございました。
都筑の緑道を含む港北ニュータウンの都市づくりが、とても意図的に美的に演出されたものであることが確信できた日でした。
港北ニュータウンは、設計家たちによるアート作品であり、日本の都市づくりの歴史遺産であり・・・
このおもしろさ、感動を、ハレバレMAPに詰め込みたいと改めて思いました。
川和中生の皆さま、こんな素敵な校舎で3年間約1000日を過ごしたことをどうぞ誇りに思ってくださいね。
見学中、すれ違う私たちに元気に挨拶をしてくださったこと、とても嬉しかったです。
おまけのはなし by michiko
写真は緑道に面した出入り口、真ん中に立つ円筒形の明かり取りの場所です。体育館と反対の壁面の2階に見えるおへその様な窪み。
と、その下の円筒形の壁と窓が気になって
見に行ってみると、またまたこんな仕掛けになっていました。本文の⑩
おへその様な2階の壁はこの丸ベンチの上方部分にあり3メートル角くらいの吹き抜けになっています。仰ぐように上を見ると光が落ちて来ているのが分かる仕掛けなのです。
設計者がここかしこに仕掛けた罠に一々嵌まり込んで見学予定1時間の予定は大幅に超えてしまいました。重ねてありがとうございました🎶
きっと生徒達は卒業後、時間の経過と共にここで過ごした日々やこんな建築的な仕掛けを思い出すんだろうな。
参加:川手先生、江幡夫妻、白川、大橋、杉原、野島、福井、木下、中山夫妻、黒沼
ゆうばえのみち、川和富士公園、川和東小学校を過ぎた先、フェンス越しに右手に見える中学校が「川和中学校」です。
川和中の校章に描かれる菊は、松林甫(中山恒三郎家)の「川和の菊」に因んでいます。港北ニュータウンの開発に伴い人口が増え、学区であった都田中が収容困難になるとともに「川和地区に中学校を」と町内あげての署名と陳情が教育委員会になされ、昭和55年に開校が実現しました。その中心となったのが当時の町内会長を務めていた中山氏、副会長の岩澤氏、川和地区の地権者の方々でした。
港北ニュータウン内で最初に建設される中学校だったので、横浜市6大事業の一つとして横浜の都市づくりのコンセプトを示す位置づけとして、企画調整室(室長・田村明氏)からの依頼で著名建築家による個性のあるデザインが採用されました。
今日の待ち合わせは緑道沿いの正門。放課後の部活時間に岩田副校長に案内していただきながら、つかの間、中学時代にタイムスリップした爽やかな秋のひと時でした。全身エネルギーで真っ直ぐな全校生徒900人近い中学生パワーをのみこんでなお、爽やかで開放的な空間を演出する立役者がこの校舎のデザイン!代官山ヒルサイドテラス、幕張メッセ、東京体育館などのいくつもの有名建築を設計された、世界的に有名な槇文彦氏の設計によるものです。大きな窓やデザイン的にも美しいあかり取りの開口部。コンクリートート打ち放しの力強さ、いろいろな形が大胆に配置されて冒険的で、自由で、大らかさを感じる校舎でした。10代の多感期の大部分の時間を過ごす子供たちへ、縮こまらずに自由に大きくあっていいんだよというメッセージとともに、ホッとできる中庭空間や至る所にある座れる廊下にも子供たちへの優しさを感じる設計でした。
一度中に入ってみたい...という思いをハレバレ会から申し入れたところ、快くOKいただき見学が実現しました。今日はその見学レポートを、写真満載でお届けします。
1.正門(緑道沿い)
左手の煉瓦造りに見えるのが体育館。真ん中にある2本の煙突のようなものはなんでしょう?
答えは、後ほどわかります。
四角、丸、三角・・・門をくぐるなり、目がキョロキョロ。
2.裏門から下足室
期待に胸を含ませながら、まずは下足室へ。
このエリアは元々は体育館と同じレンガ貼りでしたが、雨漏り対策を施してこの色になりました。
階段を反対側から。右手に下駄箱が見える。
3.地域交流室
まずは、下足室を入って右側、体育館の向かいにある地域交流室へ。
岩田副校長から川和中学校のお話を伺いました。
2年前に岩田先生はお隣の川和東小学校からこちらに赴任、赴任後に川和中の校舎が槇文彦氏設計と知ったそうです。書庫を片付けていた時に偶然出てきた『新建築』という雑誌の表紙が、なんと川和中学校!建築的に貴重なものなのだと初めて知り、『新建築』の出版元に許可を得て保護者・地域向けの広報誌に特集を組んで中学校を紹介したり、桜木町で開催された槇文彦展覧会にも行かれたそうです。展覧会では、一部でしたが川和中も紹介されていました。
何よりもこの建築の素晴らしさをできるだけ多くの方と共有したいという思いがあり、今回のハレバレの申し出に応じてくださいました。
川和中は現在築42年。老朽化・傷み・雨漏りなどの修繕が必要になり、昨年から大規模改修が入っています。
横浜市全体で校舎老朽化による建替えが多い中、川和中は建築的な価値を考慮して“修繕で残していく“という方針が出ています。
生徒たちは緊急事態宣言が明けて日常に戻りつつありますが、特に今年の中3生は修学旅行を一度も経験できないまま卒業。この校舎で暮らした日々が思い出になればと、建築の話をしたそうです。今回のハレバレの取材も含めて、外部からの川和中校舎に対する注目度を知った時に、生徒たちも一層母校への誇りを思ってくれるのではないかと期待しているとおっしゃっていました。
設計専門家もいるハレバレ隊のレポート熱が上がります。
4.体育館
地域交流室を出てまず正面に目に飛び込むのが体育館。
部活中のバレー部の生徒さんが元気にサーブ練習をしていました。
バレーボールコートが2面取れる、少々小ぶりな体育館です。
体育館内部を見ていて、屋根近く上部の窓ガラスのフォルムが美しく目を引きます。
この「カタチ」、クラスルーム棟のアーチとの連続したデザインになっています。
体育館の中を覗くのはほどほどに、見学は進みます。
体育館に沿った少し広めな廊下。さりげなく、長いベンチと一体型。
座面として貼られた木材は40年の歴史を感じさせる色に育っています。
槇氏の設計は打ち放しコンクリートが特徴なのですが、改修時にコンクリート壁がクリーム色に塗られました。
コンクリートのグレーと木板との組み合わせは、もっとカッコよかったでしょう、とはハレバレ会の心の声。
天井にはデザインが美しいあかり窓。
(上記「1.裏門」の2枚目の写真に見える三角部分の正体がこのあかり窓)
ベンチは体育館の入り口部分へと続き、真っ直ぐだったベンチがこの開口部には模様的に配置されています。
ベンチ幅や高さも様々、試合の時にはチームごとに円陣を組んで作戦会議・・そんな光景が目に浮かぶようなスペースです。
川手先生、ひと休憩。とても座り心地がいいのです。こちらは幅広タイプ。
運動中に鼻血が出てしまった子を少し寝かせたり・・いろいろな使い道になりそう。
はしゃぐハレバレ隊の仰ぐ先には・・・
どーん! と、あかり窓。
これが、1.裏門の1枚目の写真に写っている円柱の正体でした。なんとかっこいい!!
5.中庭
体育館、下足室を越えて、中庭へ向かいます。
ちょっと上を見上げると、吹き抜けや、あかり窓、
ガラスのパターンがデザイン化された大窓、
単なる階段でないデザインに凝った階段・・・ いちいちホォ〜と反応して足が止まってしまうハレバレ隊。
なかなか前に進めません。
校舎案内図。
保健室前から眺める中庭。その向こうに、川和中の特徴的な弧を描く普通教室群*。
四季を感じさせるシンボルツリーを眺めながら、3年間を過ごすのですね。
赤く紅葉する花のきれいな樹、黄色く紅葉する実のおもしろい樹を配置しているのも素敵です。
いろいろな思い出がここで生まれそう・・コンクリートのベンチもいい雰囲気でした。
(*普通教室群=クラスルーム棟。建築雑誌に記載されていた表現を使います)
違う場所アングルからですが、棟が弧を描いているのがよく分かります。
(奥に見える高い建物は、後から設置したエレベータ)
6.普通教室群
廊下がこんなふうに曲がっています!こんな学校、見たことがありません。
先生方も曲がってしまうと生徒が見えない、のだそう。
教室は四角いため、隙間を埋めるように「いびつな倉庫」があります。
教壇に立つ川手先生。今は先生と生徒の距離・圧迫感をなくすために、教壇がない学校が多いそうです。
7.多目的ホール
普通教室群を抜けて外に出て、ガラス張りが目を引く多目的ホールへ向かいます。
傾斜屋根による遠近感、全面ガラス張りの壁で開放感があります。
多目的ホール入り口付近の壁にもさりげなくロング・ベンチ。
お箸が落ちても可笑しくてしかたない15歳、ここでみんなで笑い合うのかしら。
この多目的ホールは正門左手に見える、2方向に大きく傾斜した屋根を備える棟です。
日暮れ時、道路側上部に設けられた細長い窓からは、オレンジ色の明かりのラインが。
そんな風景も、この学校が只者ではないことを感じさせる印象的なデザインです。
そしてその中は・・・
卓球台。卓球以外にも高さを必要としないスポーツ、音楽発表や、クラス全体での話し合いなどに使われているそうです。
コロナ禍前は地域にも開放して、地域の集まりが開かれたこともあったとのこと。
多目的ホールは昨年の大規模改修の対象になり、全面改修が終わっています。
入口反対側から。右窓の向こうには、カーブする普通教室群。
この窓ガラス、球技で割ったら大変。展覧会・音楽会などのアート系にぴったりの雰囲気です。
2階のギャラリーに上がると、多目的ホールの形がよく分かります。
ハ「あの黄色の線はなんですか?」
先「四角くないから、いつも通りに子どもたちを整列させると入らないんです。だから、並ぶ時の目印になるように線が引かれてます」
ハ「なるほどー。おしゃれには苦労が付きものなのねぇ」
校舎内のあちこちで見られる固定概念から外れた自由さ、窓、あかり、ベンチ、形・・・伸び伸びと成長してほしいという思いが感じられます。
8.図書室
多目的ホールの2階から渡り廊下を渡ると、反対側は図書室です。
ハレバレ会のメンバーは都筑区内で読書に関する活動をしている人が多いので、学校司書の先生に了承いただいて見学させていただきました。図書室入ってすぐの右手に、週末だけ開く「市民図書室」もあります。
本棚の圧迫感のない開放的で明るい図書室。活字に親しむ機会を増やしてもらうため、手塚治虫さんの漫画やライトノベルなども多めに置くなど工夫をされています。ハリーポッター原書も揃っていました。
9.空中回廊
図書館出口付近から、2Fに被服・調理室のある特別教室群を見ると、「しかく」の連なりが美しいです。
右側の四角いアーチ状になっている部分は空中回廊で、図書室ー多目的ルームを繋ぐ廊下と、普通教室群の2Fからひと繋がりのカーブを描いています。
上の写真の反対側(5.中庭のところで、保健室を背に中庭を眺めた風景)
この空中回廊は生徒たちからの人気が高く、ここでおしゃべりを楽しむ子たちが多いそうです。
四角ゾーンに向かう途中に三角を配す、洗練されていながら可愛らしさが。大人と子どもの間の世界。
こんな素敵なところで青春を過ごせる川和中生は幸せですね!
回廊から見える「アーチ」の普通教室群。夕焼けが映えています。
10.特別教室群(2F被服・調理室)から校長室・職員室
秋の日はツルベ落とし。日が暮れるのが早いので、校庭の方まで見学するために急ぎましょうと少し急ぎます。
放課後なので専門科目棟は真っ暗。さっと過ぎようと思ったら、思わずまた足が止まりました。
突き当たりにこんなベンチスペース。
見上げると...コンクリート打ち放しのかっこよさ!引かれたブルーの線がアクセントになって、夕陽が差し込みます。
丸ベンチを正面に左手は階段。大きなモダン絵画のような壁の模様。
コンクリートと木の手すりの感じもクリーム色に塗られた体育館前と違い、修繕前の様子を垣間見ることができる一帯。
丸ベンチを正面に右へ、校長室・職員室方面へ。
ふと振り返ると、ここにもこんな「まる」が!
なぜここは「まる」の世界?
と思ったら、この廊下部分の壁の向こうは、今日の見学で一番最初に通った裏門から体育館前を通る2つの円柱が印象的な場所なのです。丸ベンチのところの窓からは、体育館と円柱が見えます。仕掛けが深い・・・
感動でふらふらしながら見学の列についていくと、またまた足が止まる・・
なんだか大人な雰囲気の、おしゃれな“新聞スペース“。
左窓の向こうは裏門。登校してくる友達に、ちょっと賢い僕/私を見てちょうだいなんてするのかしら〜と、おばさま方はもはや夕焼けマジックもあって心は女子中学生に戻ってはしゃいでしまいました。
そしてはしゃいだ先にあるのが、校長室と職員室。
その前の廊下にも、ロング・ベンチが施されています。
11.増築した普通教室群
生徒増に伴い、増築した教室がその先に続きます。
これは普通のよく見る中学校舎、という感じ。
増築に伴い槇文彦氏の意向は入っているのかという質問に、おそらくそうです、とのこと。
スペースにも予算にも限りがあります。ずっと見てきた元からあった部分こそ、ハレバレ会で何度も書いている、高度成長経済期・日米貿易摩擦もありお金をどんどん使いなさいという時代の象徴だったのでしょう。
増築部分を通って階段を降りて1Fに戻ってきました。
校舎内の見学はもうこれでおしまい。と思った最後に、三角ベンチとその向こうには四角ベンチに丸い柱!
大満足のツアーでした。保健室・下足室を通って、来客者下足室へ。
スリッパから外履きに履き替えて、次は運動場です。
下足室を出た空間は、「やぐら」をイメージしているのだそうです。
12.運動場
グラウンド側からの体育館外観。
座るには少し段差のある階段上の観客席のようなところも、体育館の大窓やクラスルーム棟と同じアーチ状を意識しています。
この先は部室と倉庫のスペース。少し薄暗いのですが、実はここにもすごい仕掛けがありました。
倉庫の1室を見せていただきました。天井に大きなあかり窓があります。
このあかり窓こそ、緑道から見えていた「謎のドーム」の正体でした!すごい演出ですね。
(翌日撮影)
部室・倉庫と反対側には、プール。今夏の水泳全国大会リレーで優勝したそうです!おめでとうございます。
その先に、剣道・柔道などをする格技場。
中では剣道部が練習中でした。
こちらもコンクリート打ち放しに、幾何学的な模様が入って個性的です。
(緑道から)
(緑道から)
これにて学校見学はおしまい。
岩田先生、2時間にわたって余すところなくご案内くださりありがとうございました。
都筑の緑道を含む港北ニュータウンの都市づくりが、とても意図的に美的に演出されたものであることが確信できた日でした。
港北ニュータウンは、設計家たちによるアート作品であり、日本の都市づくりの歴史遺産であり・・・
このおもしろさ、感動を、ハレバレMAPに詰め込みたいと改めて思いました。
川和中生の皆さま、こんな素敵な校舎で3年間約1000日を過ごしたことをどうぞ誇りに思ってくださいね。
見学中、すれ違う私たちに元気に挨拶をしてくださったこと、とても嬉しかったです。
変化にとんだ「まち」の演出を行うとともに、「みどり」のネットワークの一つとして緑道(帯状公園緑地帯)と有機的に繋ぎ、内陸的風土の特性をもった緑の学校をつくる。かこみ配置によって中庭、前庭を構成して、内陸的気候に対応した環境を確保する。普通教室群、特別教室群、屋内運動場、管理部分におのおの領域にも建築携帯のうえでも明確なアイデンティティを与えると同時に、それらをコラージュ風に集合させる・・・『新建築1981.10月号』『建築文化1979.11月号/1981.10月号』より、川和中たよりから抜粋
おまけのはなし by michiko
写真は緑道に面した出入り口、真ん中に立つ円筒形の明かり取りの場所です。体育館と反対の壁面の2階に見えるおへその様な窪み。
と、その下の円筒形の壁と窓が気になって
見に行ってみると、またまたこんな仕掛けになっていました。本文の⑩
おへその様な2階の壁はこの丸ベンチの上方部分にあり3メートル角くらいの吹き抜けになっています。仰ぐように上を見ると光が落ちて来ているのが分かる仕掛けなのです。
設計者がここかしこに仕掛けた罠に一々嵌まり込んで見学予定1時間の予定は大幅に超えてしまいました。重ねてありがとうございました🎶
きっと生徒達は卒業後、時間の経過と共にここで過ごした日々やこんな建築的な仕掛けを思い出すんだろうな。
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