開催日:2021年9月6日 記録:nob

開催場所:川和町・中山恒三郎家敷地内にある「松林甫」(横浜市認定歴史的建造物)にて

会議の目的
  • マップ作成準備のための各自リスト作りの進捗状況の共有
  • リスト作りを進めるための白地図の使い方の説明
  • どんなマップを作りたいか?作ろうとしているか?の話し合い
     
会議の始まりに、先日、日本地理教育学会出版文化賞(児童書部門)を受賞された高橋美江さんに会からお祝いを贈りました。河出書房新社発行『発見しよう!つくってみよう!まちの地図』(全3巻)で、美江さんは監修を務めていらっしゃいます。おめでとうございます、ますますのご活躍を!
 
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「ショコラボ」のチョコレート。美江さん、「これもマップに入れましょう!」

マップアプリとQRコードの採用
「緑道ハレバレMAP」のアプリ版も検討していますが、GPSを使って現時点の自分の居場所が分かること、紙面には書ききれないスポットの説明がアプリだと無制限に紹介できることの利点は魅力的で、採用に向けて検討が進みます。アプリインストールをMAP購入者だけに限定する場合、技術開発に時間を要するので、4月にMAPリリースの場合はアプリ配信は2ヶ月ほど遅れてスタートとなる可能性があることを確認しました。いずれにしても、
MAPからアプリへの誘導はQRコード。QRコードの便利さ、技術の進歩にみんなでホレボレ盛り上がります。すごい時代になりました。

ハレバレ名刺
QRコードといえば。早速でハレバレ名刺に「緑道HARE -BARE」サイト(HP)へのQRコードが載っています。緑道で素敵な出会いがあった時に名刺をお渡しできるように、江幡さんがパソコンと格闘の末、名刺をメンバー全員分作成しました。個人情報保護の規制が厳しいご時世ですのでブログやMAPにお写真を掲載させていただく場合に、私たちの素性をきちんとお伝えするのが筋です。名刺とともに私たちの活動が広がっていくことも期待して、軽やかなデザインです。
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白地図の活用方法
緑道沿いのおすすめスポットの洗い出し作業のためにリスト作りを始めたところ、不都合が生じたため、bataさんが区の発行の「都筑区生活マップ」を1.3倍の白地図にプリントして、緑道・オレンジ道路・公園・主要の車道などを色分けしたものを作成しました。そこに自分の気になるスポットを直接書き込むと作業効率化がはかれるためと提案されました。なるほど、白地図なので自分の伝えたいスポットの場所を正確に書き入れやすく、自分でも視覚的にイメージが確認できると、一同感心しきりでした。
色をつけてみると、緑色の緑道(くさぶえのみち・ふじやとのみち・せきれいのみち・ささぶねのみち・ゆうやけのみち)や公園以上に目を引く、オレンジ色の道がたくさんあります。通称、「オレンジロード」あるいは「生活道路」「自転車歩行車専用道路」と呼ばれる、区民が生活のために使うことを想定して設計された道路です。いずれも歩車分離を実現する、区民生活を安全・豊かにする最大の仕掛けです。
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 配色が美しいお手製白地図。実際に道をなぞってみると、街の作りを把握できます。

オレンジロードを地図に含めるか?
20年前の絵地図は緑道をメインに作成しています。さて、今回は「オレンジロード」をどう扱うか?限りある紙面での作成なので、情報の整理と断捨離作業が常に必要になります。現時点では、のちに削ることはあまり考えずに、入れたいと思うスポットを並べることが優先されていますが、骨組み部分の議論は欠かせません。
結論。「緑道」を表す正確な定義は、駅や学校・買い物へ行く目的で使われる通称「オレンジロード」も 含まれるという川手先生の言葉の通り、「オレンジロード」も重要な緑道です。絵地図でメインに描かれる「緑道」へ行くためにも「オレンジロード」を通る道がおすすめ。全てのオレンジロードを書き込むことは無理ですが、例えば駅から緑道に出るまでのオレンジロードは含めたい、ということで決まりました。
港北ニュータウンの緑道設計の素晴らしさを満喫するためには、“歩車分離”を体感するに尽きる。 (余談ですが、横浜市内全区で、駅から区役所まで信号ひとつもなくたどり着けるのは都筑区だけ!)そのためには、駅→「オレンジロード」→「緑道」を歩いてもらってこそ。ハレバレ会の地図は、ハイキングマップのような万能受けする緑道のお散歩地図なのか?それとも・・・議論は膨らんでいきました。
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駅から伸びるオレンジロード(生活道路)、橋の下は車道。

ハレバレ会の地図は何を目指す?
「緑道MAPに入れたいスポットを各自でまずはリストしましょう、と美江さんから課題が出てますが、真っ白なリストを目前に悩んでいます。役所の土木事務所へ行けば無料で「健康づくりお散歩マップ」がもらえますし、観光名所(寺社仏閣や歴史的建造物、花の見頃情報など)が網羅された都筑区役所発行の「都筑区水と緑の散策マップ」が役所の売店で買えます。ハレバレ会のマップは、『絵地図』『パッと広げられるミウラ折り』。これだけが売りで、内容は他の地図とあまり変わらない、そんな地図を作りたいのだろうか、と手が止まってしまいました」

リスト作成進捗状況の共有が今日の会議のテーマ。今日のためにリストを用意してきたメンバーの頑張りに待ったをかけてしまう罪悪感、先程までQRコードを使えばMAPにあんなこともこんなことも入れられるとワイワイ盛り上がった矢先にこんなことを言っていいものか悩みましたが、このままの作業の延長線上に浮かび上がるMAPに魅力を感じなくなってしまった自分がいたのでした。緑道には案内板がしっかりあり、ほぼ1本道。地図がないと歩けない訳ではない。(そもそも公園散歩は何も持たず考えず歩くもの?)それでも手に持ちたくなるもの。

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さあ・・・何を書こう。

「私たちの始まりはなんだったか。川手先生から港北ニュータウン誕生の話を聞くお勉強会として集まり、先生の話に感動した。川手塾としてさらにお話を伺いながら、こんなすごいニュータウンの魅力をみんなに発信しよう。その先にニュータウンの景観保持につながる未来を描こう」この思いがハレバレ会の背骨にあるのなら、ハレバレ会の作るものはお散歩マップではなくて、この思いを“マップという手法を使って表現したもの”。マップの一言では言い切れない、読み物のような(1枚なので壁新聞に近い?)、でも地図として実用性も備えたもの。何度でも読み返したくなるもの・・

「そう。この港北ニュータウンの緑道のすごさは、本当にすごい。おもしろい。それは自分が建築の世界にいたから特に感じるもの。 お金や時間の問題で普通だったらここまではできない”建築界の普通”を越えた設計がこれでもかと溢れている。ニュータウン設計自体が、昭和・高度成長経済の産物。そこに日米経済摩擦のおかげで資金があったことや、心気ある市長・役人・設計者・市民(特に7賢人)という優秀な人材が奇跡的に揃ったことが、この夢のようなすごいニュータウンを実現させたんだ。緑道に置かれた石一つとっても、そういう歴史や人の思いを感じる。このニュータウンのすごさを知っている人が段々いなくなり、そのうち誰もそういう人がいなくなり、これをどこにでもある緑道として維持していく時代が来るかもしれない。その時には、安全性最優先の無味乾燥な緑道になってしまうかも。そう思うと惜しい。今、自分たち市民がこの緑道のすごさ、これを守りたい意思を形にして記しておくこと。これはすごく必要なことだと思う。未来の緑道管理の指針に、市民の声として届けるためにも」

「この週末、外国人・日本人のご夫妻が遊びにいらした。早速で、近所の山田富士公園に案内して、このハレバレ会で得た知識(ここも設計家による壮大なニュータウン構想の一部であること)をご披露した。とても感動して、これからのお散歩、毎回ガイドをして欲しいと興奮されていた。人がワクワクするのは、そういう情報という手応えがあった」

「緑道に自分が感じるのは、いつも「人」の存在。特に過去の人。 このニュータウン自体が、何もなかった場所とはいえ、元々住んでいらっしゃった方がいて、その方達との話し合いや理解があって今がある。ニュータウン開発前には、先代の方達の暮らしや風土があった。緑道や緑道をそれたここかしこに、そういう過去の人たちとの対話の瞬間がある。私はそれが一番好き。すごく残念なのは、そういう場所にあまり看板(案内)が立っていないこと。マップに、そんな時空を越える看板もさせたらどうだろう」

「先日開催された100人会議(都筑・ZOOM版)で、川手先生が10分だけどお話しされた。100人会議に参加していたのは主に40代前後の若い人が多い。その人たちからのリクエストで、今度、川手先生が50分お話しされたらどうかの打診があった。港北ニュータウンのことをもっと知りたいと思っている人が、若い層にもたくさんいるということがよくわかった。川手先生のお話を聞き、一緒に歩いた情報を持っていることはハレバレ会のすごい強み。ZOOMにもチャレンジされる川手先生にとって、今が、港北ニュータウンのことを伝え残す大きなお役目を果たされる時なのかもしれない。その声を一番近くで聞かせてもらっている私たちは、それを表現するものを作りたい」

緑道散歩から離れて、自宅で白地図とリスト用紙片手に実際に手を動かし始めて沸き上がってしまった疑問が、どんどん前向きな意見交換へと膨らんで行きました。

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私は、コロナ禍に緑道散歩をしてはその感動をブログで紹介していた江幡さんご夫妻に出会うまで「ランドスケープ」 というものの存在すら知らず、当然のこと、”この町も誰かが設計した”という発想すらありませんでした。設計といえば、建物かプロダクトしか連想しませんでした。川手先生のお話を伺うと、さらにこの街そのものが設計美術館のように見えて楽しくて仕方ありません。
なんてことない椅子に座っていると思っていたのに、それ世界に10脚しかない椅子だと囁かれたら、途端にお尻が痺れてしまう!、そんなに発見の囁きが溢れたMAP?MAP型読み物?お宝発見の指南書?港北ニュータウン・設計美術館公式ガイドブックのようなものを作りたいと、私の中の描くものの姿が浮かんできました。ハレバレ会は遊びの名人がいっぱい。みんなの遊び心を盛り込んで・・
先はまだ見えきらないけれど、手を動かしてみる、口にしてみる。そんな議論で、自分の頭の中も整理されてきました。

"なんだか、「緑道ハレバレMAP」の方向が少し見えてきた気がしませんか?"
まとめの言葉で、今日の会議はタイムアップ。
このメンバー、設計も歴史もデザインも自然のことも、それぞれの知識が豊富な方がたくさんいて。
都筑ビギナーから超ベテランまでが揃い、絶妙なバランスでお互いの力が引き出されていきます。
「設計・アート」「歴史」「自然」...興味ある分野で、もっともっと港北ニュータウンを深掘りして秘められているスポットを洗い出してみよう。暑い夏が終わって、最高の散歩シーズンがやってきます。

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続きは、またハレバレ散歩ブログで・・・・。


【おまけ
ここまで読んでくださった方へ、橋に釘付けになる囁きをお一つ。
ニュータウンの緑道にかかる歩車分離のためにかけられた橋は全部で120近くあります。
そのデザインは、全て違うそうです。

へえー。と思いますね。
でも、さらにちょっと想像すると・・・

橋を120もデザインするってすごくないですか?
もちろん一人の人が120デザインした訳ではないでしょう。
うんうん、と思いますね。でも、もうちょっとさらに想像すると・・・

一人 が10橋を作ったとしても、12人の設計家が必要です。(公園に12人もの設計家?)
そして120も仕様の違う橋。それぞれの材料を別試算して、個発注して、組み立てる。
時間もコストも削減・高効率性が慣わしの今の私たちには、あり得ない贅沢。
それを想像してもう一度橋を見ると、目が変わる。高度成長経済を体験する瞬間。


ちなみに、一人当たり20橋くらいは設計できたんじゃないの?プロなんだから、と思った方。
どうぞ、ちいさな絵でいいから全然違うちいさな絵を20個、描いてみてください。
 やっぱり設計家が12人、いや24人、40人いたかも、と気付くと思います。
実際、このニュータウンに関わった設計家の数・・・すごいのです! 
そんな若き有能な設計家たちの熱狂も、感じてみてください
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